まるで糠床を混ぜるかのような、しっかりとゆっくりとした手。
彼女が混ぜているのは、豚たちの食事だ。
一つ一つの食材と向き合いながら、豚の健康を考える。
愛情たっぷりの手作業が印象的だった。
* * *
“郷(ごう)ポーク”
ニーノの食材のひとつ。
地元奈良で育った豚。
ジューシーで甘味のあるおすすめの食材だ。
「よし!会いに行こう!」
私たちは、奈良と京都の県境近く、山あいで育つ豚に会いに行った。
* * *
配合飼料は一切使わず、人間が食べるのと同じもので豚を育てておられる。
野菜、果物、ご飯、パン、麺・・・30品目ほどの食材。
食品関連会社等の協力を得て、使わない皮の部分を利用するなど、循環型の畜産農法だ。
「細かく刻んでよく混ぜます。そうすると酵素の働きが活発になるんです」
「食材が偏らないように気をつけています。栄養バランス・・・大事ですから」
案内の女性が教えてくださった。
“もしかしたら、私たちよりバランスのいい食生活かも・・”
そんなことを思いながら、豚舎に向かう。
「噛みごたえのあるものも食べさせています。人間でも、よく噛むといいって言うでしょ」
慈しみと愛をいっぱいに受けた豚。
まるで、子供を育てるかのような愛情だ。
豚舎を覗き込むと、一斉に豚たちの注目を浴びた。
奥にいた豚も、私たちの姿を見るや近づいてきた。
“かわいいっ!そしてなんて人懐っこいんだろう”
この人懐っこさにはワケがある。
手作業で、それぞれの豚舎に餌を分けているからだ。
『はやくちょ〜だ〜い!!』
そんな豚たちの声が聞こえてくるようだ。
豚と人間。食を通して心を通わせている気がする。
子豚たちは、可愛さが格別!
まぁるいお尻。愛くるしい目。
子豚たちの様子をながめていると、その時、一頭の子豚が店長の西野に近づいてきた。
西野の顔を見つめ、しきりに何かを話しかけている様子。
“店長・・・豚のことばわかるの?豚と心通じ合ってるの?”
豚にモテる店長。
なんだか不思議な力持ってるのね(笑)
* * *
愛情をもって、誰かのために食事をつくる。
顔と顔を合わせながら、相手の健康を願い、作った食事を提供する。
当たり前だけれど、ついつい忘れがちになりそうなこと。
食べることは生きること。
食は体だけでなく、心もつくる。
つくる人、食べる人・・・食を通じたコミュニケーション。
とても大切な「食」のあり方を、あらためて感じることができた。
命を量産するのではなく、大切に育て、感謝しながらいただく・・・
そんな村田さんの思いが伝わってきた。
命と向き合う仕事をしている人は美しい。
そして、そんな人たちに育てられた豚は、元気で美味なのだ。
私たちも、あらゆる動植物の命に感謝し、それをお料理に変え、お客さまの健康、豊かな心に貢献できるNinoでありたい・・・そんなふうに思った郷ポークの郷(ふるさと)訪問だった。
(by MAYUMI)
〜郷ポーク〜
生産者:村田商店(奈良市鳴川町)
山と川に囲まれた自然豊かな“むらさと”で育ったブランド豚。
ジューシーな赤身とクリーミーで甘味のある脂身のバランスが最高!
Ninoでは、ステーキやシチューなどのお料理で召し上がっていただきます。